裁判官・検察官・弁護士という法曹三者になる資格を得るためには、1年に1回の司法試験に合格したうえで、裁判所・検察庁・弁護士会と司法研修所での1年間の司法修習という実習を経ることが必要です。2004年からは、法科大学院(ロー・スクール)制度が発足し、法曹になるには、司法試験を受ける前に、原則として法科大学院という専門課程を修了したことも必要となっています。

私は、ロー・スクール制度の発足当初から現在まで、関西学院大学の法科大学院で実務家教員として法律実務科目を中心に教鞭をとって後進育成に力を注ぐとともに、法曹養成制度をどのように改善・改革していくかについても議論と研究を重ねてきました。

法科大学院制度が導入されたのは、2000年前後の時期に司法制度の全般的な改革について国民的な論議がなされ、政府の司法制度改革審議会が2001年に意見書を取りまとめたことが決定的な契機となっています。この意見書では、これからの法曹像について、「国民の社会生活上の医師」としての役割が求められるとして、「豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等の基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力等」を備えるべきであると提唱され、弁護士人口も大幅に増加させて、従来のような裁判での活動だけでなく、企業や行政・公共団体を含む各分野における活動を拡大していくことが求められることとなりました。これを受けて、現実にも多数の弁護士がいろいろな分野で活躍するようになってきました。

このように、法曹の果たすべき役割が裁判の場以外にも幅広く求められているにもかかわらず、司法試験は、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法という7科目の論文式試験がメインで、出題内容の大半は裁判を想定した設例についての解答を文章で書かせるという形式をずっと踏襲しています。また、司法試験合格後に行われる司法修習は、裁判官・検察官・弁護士の指導の下で裁判実務の訓練をすることが不可欠の内容となっています。

私は、司法試験と司法修習のこういった枠組みは、新しい法曹養成制度が描いている理念との間でずれを生じさせており、有為な人材が法曹を目指すことの障壁の一つになっていると考えています。この点を解決するためには、司法試験を、現在のような難しい設問を多数の科目にわたって解かせるのでなく、基本的事項の確認を中心にする出題にするとともに、科目数も思い切って減らすべきだと思いますし、司法修習についても、現在の裁判実務の実習以外に、企業や団体内での法務に従事する研修プログラムを一定期間選択できるようにすることなどが必要であると思います。

有力な法律雑誌である法律時報の2019年10月号に「「司法試験のあり方~新しい法曹養成制度の理念に沿ったものとするには~」、2020年4月号に「司法修習制度の抜本的改革に向けて~企業・公共団体内弁護士へのアンケート結果も踏まえて~」の2つの論考をまとめました。添付したのはそれぞれの冒頭部分です。雑誌を紹介したアマゾンのURLも貼り付けますので、関心のある方は是非ともお読みください。

  亀井尚也論考「司法試験のあり方」(法律時報91巻11号・冒頭部分)

  亀井尚也論考「司法修習制度の抜本的改革に向けて」(法律時報92巻4号・冒頭部分)
 

https://www.amazon.co.jp/法律時報-2019年10月号-通巻-1143号-「公共」をめぐる参加と訴訟/dp/B07W8LKTGF/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E6%B3%95%E5%BE%8B%E6%99%82%E5%A0%B110%E6%9C%88%E5%8F%B7&qid=1585188814&sr=8-2

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