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ケース編その2:遺言の効力が疑わしい場合はどうする?

Q:被相続人が遺言を残しているのですが、遺言書の日付や内容からして、被相続人がそのような遺言を作成することはありえないと思われる場合には、どうすればよいでしょうか。

A:

  1. 遺言がある場合は、遺産は遺言書に記載されたとおりに特定の人が取得してしまうことになり、もはや相続人間で遺産分割協議をする余地すらないということになることがほとんどです。
    したがって、遺言に従えば遺産を全くもらえないとか、少ししかもらえない相続人としては、もしその遺言の作成自体に疑問があるという場合は、遺言によって多くの遺産をもらえそうな人を相手取って、裁判所に遺言無効確認の訴訟を起こす必要があります。裁判所が遺言を無効と判断してくれれば、その遺言は存在しないことを前提として遺産分割協議を行うことができます。
  2. ところで、遺言が無効になるのは次のようないくつかの場合があります。
    • 遺言が民法の定める方式にしたがっていない場合です。例えば、自筆証書遺言という、最も多く行われている遺言書は、遺言者が文章の全文と日付・氏名をいずれも自書して印鑑を押さないといけません(民法968条1項)が、氏名は本人の筆跡だけれども文章の一部が誰かの手によって書かれている場合とか、文章がパソコンで打ったものであるというような場合です。文章がパソコンで打ってあるというような場合は、一見して遺言は無効ですから、裁判所で遺言無効確認の訴訟を起こすまでもなく、その遺言は法務局や銀行に持って行っても通用しないでしょう。しかし、筆跡を問題にする場合は、裁判所の判断を要することになるでしょう。
      なお、今般の相続法改正により、2019年1月13日以降に作成した遺言については、遺言に添付する財産目録の部分は自書せずにパソコンで打ったり不動産全部事項証明書を添付したりし、目録部分の全頁に署名捺印をするという方法でも、可能となりました(民法968条2項)。
    • 遺言者には遺言をした当時自分の意思で遺言を作成する能力(=遺言能力と言います)がなかったという場合です。設問にあるような、「遺言書の日付や内容からして、被相続人がそのような遺言を作成することはありえない場合」の中には、このような場合もありえます。遺言書の内容よりも、日付が特に重要です。遺言者が当時すでに認知症が進行していて、要介護度も高く、介護施設に入所していたとか、病院に入通院中であったというような場合です。
      そのような場合には、介護施設の入所記録とか、病院のカルテ、介護保険の要介護度認定の記録等に、遺言者の状況を客観的に記録した記載が残っていると思われますので、これらを取り寄せ、遺言者が遺言能力を備えた状態で自らの意思によってそのような遺言を作成することが医学的に見てもありえないことを証明することになります。書類の中には、訴訟手続内でならば取り寄せることができる書類もあります。裁判例では、自筆証書遺言だけでなく、公証役場で作成された公正証書遺言の場合でも、遺言能力が否定されて遺言無効と判断されたものがかなりあります。
    • 遺言書の内容自体が意味不明の場合です。例えば遺産すべてをAさんにあげるような記載をしている一方で、Aさんに対して、相続人全員で分けへだてのないように処理して欲しい旨が記載されていて、いったい遺産を誰にどのように分けるのかはっきりしないというような場合です。
  3. このように、遺言書の無効というのは、いろいろな場合が挙げられるのですが、逆に言えば、これらの問題、すなわち方式・筆跡・遺言能力・内容の明確性のいずれもがクリアーされている限りは、ある相続人から見て、被相続人がそのような遺言を作成するはずがないのでおかしい、といった推測をするだけでは、遺言の効力を否定するのは難しいということもできます。専門家に相談してみた方がよい場合も多いと言えるでしょう。
  4. なお、もし遺言が有効ということになった場合でも、遺産をもらえなかった相続人から遺産を多く取得した人に対して、遺留分侵害額請求と言って、法律で定められた遺留分にあたる分(多くの場合は法定相続分の2分の1)を金銭で請求する手続を行うことは可能です。ただし、遺留分侵害額請求の意思表示は、遺言等によって遺留分を侵害されたことを知ったときから1年内に行わないと時効にかかってしまいます。したがって、遺言無効確認の訴訟を行っている間に1年間くらいはすぐに経過してしまいますから、遺言が有効と判断される場合に備えて、念のために遺留分侵害額請求の意思表示を現時点で内容証明郵便によって行っておくことが不可欠です。詳しくは、遺留分の記事をご参照ください。

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